記憶と忘却の項で書きましたが、我々の記憶の流れは、記銘(符号化)、保持(貯蔵)、想起(検索)という順になります。
情報を記銘する際には対象に注意を向けることが必要で、想起する際には検索手がかりが必要です。
保持している間にも情報は減衰していきますから、忘れた記憶は再度記銘し直すことが必要です。
このような脳の特性を理解した上で、英単語の覚え方の一例を書きます。
次の英単語を覚えることにします。
congratulation 祝い、祝辞
encourage 励ます、奨励する
outweigh より重要だ、しのぐ
respectively それぞれ
significant かなりの、重要な、意義深い
unprecedented 先例のない、空前の
まず、英単語と意味は1対1になるようにして覚えます。
従って上記の5語なら組み合わせは12組になります。
これは、意味(日本語)と英単語が1対1になるように覚えておくと、日本語に対して即座に英単語が出てくるからです。
1−1長い英単語は、意味のある塊に分解できるものは分解します。
ワーキングメモリーで短期記憶できる情報の「まとまり」は4チャンク程度とされます。
4チャンクは数字なら4つ、文字でも4つ程度ですが、意味のあるまとまりなら4個くらいになります。
そこで長い英単語の場合は、英単語を意味のあるまとまり(語源など)に分けてそれぞれを短くします。
con(=together)-gratulat(e)(喜ぶ)-ion
en(〜させる)-courage(勇気)
out(越える)-weigh(重い)
re-spect(見る)-ively
signif(y)(重要である)-icant
un(=not)-pre(前)-cede(行く)-nted
1−2覚えようとする英単語を発音して、意味のイメージを思い浮かべます。
これによって対象に注意を向けることができ、短期記憶に移せます
2−1英単語を見ながら、見なくても発音と意味が言えて意味のあるまとまりとスペルが書けるようになるまで繰り返します。
この時、無意識に行うのではなく、思い出そうという意識を持って言い、書きます。
発音や意味のあるまとまりを意味やスペルと同時に覚えることで、関連付け(想起するときの手がかり)が増えます。
2−2英単語を見ずに英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
2−3間違いなくできたら、5秒ほど時間を置いてから、何度か、英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
この時、可能なら対象の英単語を用いた文章を作って書きます。
例 He offered his congratulations.
2−4間違いなくできたら、3分ほど時間を置いてから、英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
可能なら対象の英単語を用いた文章を作って書きます。
2−5間違いなくできたら、1時間ほど時間を置いてから、英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
可能なら対象の英単語を用いた文章を作って書きます。
2−6間違いなくできたら、翌日、英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
可能なら対象の英単語を用いた文章を作って書きます。
2−7間違いなくできたら、1ヶ月後、英単語の発音と意味を口に出し、意味のあるまとまりとスペルを筆記します。
可能なら対象の英単語を用いた文章を作って書きます。
これによって長期記憶に移ります。
脳は出力依存性を持ちます。
思い出したり使ったりすることで、そのぶん深く記憶にとどめます。
思い出すだけではなく、使うと、思い出すだけよりもさらに記憶が強固になります。
2−2以降で間違えたら、2−1からやり直します。
時間を置いている間は、頭の中で繰り返さないようにします。
3
長期記憶に移ったら、英単語を見ながら、発音をし、意味を想起します。
思い出せない場合は、英単語を意味のあるまとまりに区切って見て、思い出します。
記憶する際に、発音や意味、スペルや意味のあるまとまりを関連付けて記憶したことが、想起するのに役立ちます。
意味を見ながら、英単語を思い出して発音しスペルを想起します。
これによって長期記憶から思い出す訓練ができます。
注意
英単語をいつも同じ並び順で覚えていると、前後の英単語との並び順が関連付けされて記憶されてしまいかねません。
その場合、目的の英単語を、前後の英単語抜きでは思い出せない可能性もあります。
従って英単語の並び順を時々変えます。
単語カードなら時々シャッフルします。
参考文献
六波羅穣著 一流の記憶法 ニケ出版
西澤ロイ著 頑張らない英単語記憶法 あさ出版
「脳」を知る-週刊東洋経済eビジネス新書no.195 東洋経済新報社
コメント