怠け者の秀才ほど忘れやすく、頑張り屋の鈍才ほど出来るようになる理由

頭脳

社会人になっても学習することは多いですが、新しいことはなかなか覚えられないという方も多いと思います。

繰り返し学習することについて示唆のある文章がPopular Scienceにあります。Nature Neuroscienceに載った最近の研究結果が紹介されています。

目次

このページの要約

実験内容と結果

2つのグループに分けて学習を行わせた。

1つ目のグループは

1つの課題を学習した後、30分休憩してから似たような2つ目の課題を学習したところ、1つ目の課題については最悪で、2つ目の課題は良い成績だった。

1つ目の課題について最悪の成績だったのは逆向干渉(retrograde interference)として知られる現象が起きた。

逆向干渉とは、2つの似た事柄を学習した時、2つ目の学習によって1つ目の学習内容を忘れること。

2つ目のグループは

1つ目の課題を20分ほど過剰学習した後、30分休憩してから似たような2つ目の課題を学習したところ、1つ目の課題についてはずっと良い成績を出した。2つ目の課題は過剰学習しなかったグループの大体半分の習得度だった。

学習してすでに出来るようになった後もさらに繰り返して学習することを過剰学習という。

2つのグループがこの結果に至ったメカニズム

学習すると脳はグルタミン酸での興奮(glutamate-dominate excitatory)の量が多くなる。

グルタミン酸は脳を柔軟にし学習を得意にする。

過剰学習するとグルタミン酸の量が減り、脳を安定させるγアミノ酪酸(GABA)の量が増加する。

それにより学習した内容が定着する。

補足

ただし過剰学習した効果は4週間しか持たない。

過剰学習は、他の学習テクニックと組み合わせるのが良いだろう。

以上

解説とまとめ

1つ目のグループのように過剰学習しない場合は、最初の学習でグルタミン酸によって脳が柔軟になり課題を習得できますが、GABAの量が増えずグルタミン酸が多く脳が柔軟で安定しないまま2つ目の課題に移るので、1つ目の学習内容が2つ目によって上書きされてしまうわけです。

2つ目のグループのように過剰学習した場合は、過剰学習は学習→繰り返し学習という過程を経るので、最初の学習の時点でグルタミン酸によって脳が柔軟になり課題を習得でき、繰り返し学習の段階に移ると、グルタミン酸の量が減りγアミノ酪酸の量が増加して脳が安定し学習内容が定着するわけです。

学習内容が定着した後に2つ目の学習に移るので、1つ目の学習内容が2つ目によって上書きされることがありません。

一方で、2つ目の学習は脳が安定した状態の時に学習を始めることと、過剰学習しないこととで、2つ目の課題の習得度は落ちるわけです。

秀才ほど課題についてすぐ理解し、できるようになります。できるようになった、自分としては簡単なことを繰り返し学習するのは必要性も感じない上に苦痛です。怠け者であれば尚更で、だから過剰学習をしないことになります。過剰学習をしないため、結果として忘却曲線(エビングハウスの忘却曲線が有名)に沿って学習内容を忘れてしまいます。

一方鈍才は、課題を習得するために繰り返し学習する必要があります。頑張り屋は繰り返し学習しながら少しずつ理解していきますが、その理解した部分も繰り返して学習することになります。その結果過剰学習となり課題をずっと良く習得できるわけです。

一流になった人は鈍才や不器用な人が多いかもしれません。

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