観察・分析・仮説・実験(実行)・検証のループを回す

知的生産

なぜ仮説が必要になるのか

何らかの問題点を解決することを考える時、総当たりで考えるとやらなければならないことが増えすぎ、膨大な時間がかかる場合が少なくありません。

例えば工業製品の製造上の問題を解決する場合、10工程あったとして、1工程で2通りの組み合わせがあったとしても、1024の組み合わせを考えなければならなくなります。

総当たりでは労力や時間がかかりコストもかさんでしまいます。

また、1回行うのに非常に時間もコストもかかるようなケースでは、何度も実験・実行をするわけにはいきません。

そのような場合、『こうすればこうなる』という理論があれば、その理論に従って実験・実行をすることで、効率よく問題解決に到達できます。

そのような理論がない場合、仮の理論である仮説を立てて実験・実行すると良いのです。

暗中模索という言葉がありますが、出口を探して暗中を模索するとき、いつまでたっても到達できないと、やがて諦めてしまいます。

しかし、こちらに出口があるという根拠があれば、諦めずにその方向に進み、やがて出口に到達できます。

仮説はそのような力になります。

ただし仮説といっても、実行可能な仮説もあれば、確認すら不可能な仮説もあり得ます。

ここでは実験・実行可能な仮説に限って話を進めます。

 

正しい仮説とは

しかし仮説は闇雲に立てて良いわけではありません。

最初に仮説があるのではなく、現象や物事の観察、分析があった上で仮説を立てます。

問題点がどのようであるかを観察、分析した上で、このような理由によってこうなる、という仮説を立てます。

細工のない普通のサイコロを振って、目が2回続けて5だったとき、『次も5だろう、なぜなら2回続けて5だったから』というのは間違った仮説の立て方です。

また、『次は5以外だろう、なぜなら2回続けて5だったから』というのも、当たる可能性は確率5/6あるわけですが、やはり間違った仮説の立て方です。

なぜなら観察も分析もありますが、不合理だからです。

仮説は合理的でなければなりません。

仮説は、現状を説明できなければいけませんし、未来について予測できなければなりません。

単に現状や過去を解説できるだけで、未来について予測できないのでは、後付けの説明に過ぎません。

合理的であって、過去や現状を説明でき、未来を予測できて、正しい仮説であるといえます。

 

仮説の立て方

小型BSチューナーの開発を担当していた時、ターゲットを2年後に置いていたのですが、2年後の市販BSチューナーのサイズはどこまで小型化が進んでいるかを予想する必要がありました。

そこで過去の市販BSチューナーの発売年の対数を横軸、サイズの対数を縦軸にしてグラフを描いたところ、直線上に乗りました。

BSチューナーの回路は変化が少なく、使用している部品サイズの小型化の進展がスケーリング則に乗っていることと、ディスクリート部品がチップ部品に置き換わることを考えれば、2年後の市販BSチューナーのサイズは直線上にあるだろうという仮説を立てました。

2年後、他社の発売したBSチューナーのサイズは直線上に乗りました。

仮説は正しかったということになります。

 

仮説を立てる時、対象になりきって考えるのは、役立つ方法です。

ある磁気記録テープの開発メンバーだった時、テープの再生波形が波打つ現象を解決するため、テープとテープに当たる再生ヘッドになりきって考えました。

その結果、再生ヘッド周りでのテープの挙動がひらめき、解決に結びつきました。

具体的には、ゆっくり動くテープと高速に回転する再生ヘッドとは高速に接触しますが、再生ヘッドとテープの間に、テープと再生ヘッドとの衝突による衝撃、再生ヘッドの巻き込む空気、テープと再生ヘッドの間の摺動によるテープの歪み、テープと再生ヘッドとのスリップによるテープの跳躍、テープのねじれ、テープの振動、による隙間が生じるという仮説が浮かびました。

これらは全て物理的にあり得る挙動です。

また装置をいじってテープの張り(テンション)を調節したり、再生ヘッドの突き出し量を変化させてテープと再生ヘッドとの間の接触を調整したりして、予測通りに波打ちが変化することも確認しました。

従ってテープ側の目標は、テープの硬さ(スティフネス)、テープの張りの方向、テープとヘッドの摩擦係数、テープと装置との摩擦係数、などに絞り込まれ、対策後、波打ちはなくなりました。

 

高周波回路の設計時に、同僚が担当していたミキサー回路が異常発振する現象がありました。

あるとき別のアンプ回路が異常発振する現象があり、アースが弱くなっていて信号が反射してしまい発振しているのではと思い浮かび、アースを強くしたところ発振は治まりました。

一方、そのミキサー回路は回路的にアンプと共通するところがあり、従ってアースガ弱くて異常発振しているのではと提案し、アースを強化したところミキサー回路の異常発振は治まりました。

これは二重に仮説を立てたといえます。

 

同僚から回路がうまく動かないと意見を聞かれ、状況からキャパシタンスが不足しているという仮説を考え、キャパシターを付け加える提案をしました。

同僚もそれはすでに試していて、効果はなかったとのことでした。

しかし仮説を覆らせるだけの実験はしていないと考え、実験で使わなかった容量の大きなキャパシターを使ってもらいました。

その結果、回路は想定の動きをするようになりました。

これはもし仮説を立てなければ、実験してダメだったのだからと、キャパシターを付け加える方向はボツになったはずです。

やってみてもダメだけれど、仮説ではその方向で良いという場合、仮説が間違っているのか、やり方が不足しているのかということは論点になります。

その場合、単にやってみてダメだったではなく、仮説を否定するだけのデータが出たのか、と考えるべきです。

 

検証について

観察し、分析し、仮説を立て、実際にやってみて(実験・実行)、仮説が正しいかどうかを検証します。

実験・実行した結果、仮説が否定されたように見えても、実際には実験・実行不足だった、という例があります。

上にも書きましたが、単にやってみてダメだったではなく、仮説を否定するだけのデータが出て初めて、仮説が否定されることになります。

検証には定量的な観測だけではなく、定性的な観測も大切ですし、重要です。

仮説が正しければ、問題が解決されるか、解決の方向に向かいますし、また未来的な方向も出ます。

仮説が正しくなければ、再び観察、分析へと入っていきます。

 

観察→分析→仮説→実験・実行→検証のループ

Kasetsu

仮説が100%正しければ、問題は解決の方向に進みますが、実際には間違っていたり、完全には正しくない場合が少なくありません。

その場合、検証結果を元に、観察→分析→仮説→実験・実行→検証のループを回すことになります。

または、新たにデータを付け加えるなどして、観察からやり直すことになります。

いずれにせよ、観察から仮説を経て検証に至るループを回すことになりますが、2回目の仮説は、1回目の仮説よりも実験・実行結果が増え、仮説も絞り込まれているため、仮説のレベルが上がっています。

観察→分析→仮説→実験・実行→検証→観察の、最初の観察より、2回目の観察の方がレベルが上がっています。

ちょうど、螺旋階段を上がるように一回転して階が上がるイメージです。

このようにしてループを回し、仮説の信頼度を高めていきます。

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