東北大学の川島隆太先生による、単純計算や文章の音読が脳の前頭前野を活性化するという研究は有名です。
前頭前野は認知・実行機能や情動・動機付け機能を担い、意思決定、意欲や注意、パーソナリティーに重要な役割を果たしているとされています。
意欲が湧かずに課題に取りかかれないという人や、不注意で失敗が多いという人は、学習や仕事の前に単純計算や音読で前頭前野を活性化すれば、やる気が出て来たりミスが減るかもしれません。
2005年以降、川島先生監修による脳を鍛える大人のDSトレーニングが流行りました。
内容は四則演算100問や名作音読、画面に一瞬表示される数字の順番を覚える瞬間記憶、画面に表示される文章が何文字あるか数える文字数え、画面に表示される家に人が出入りして最終的に何人家の中にいるかを数える人数数えなどが含まれていました。
ソフトを使わないまでも、日常的に数字を見たら暗算してみたり、スクランブル交差点で人の数を数えてみたり等すればよい脳トレーニングになるかもしれません。
前頭前野の部位で背外側前頭前野はワーキングメモリーや注意集中・注意制御、判断力、計画性、学習能力、などに関わっているとされますが、注意機能の訓練に音楽利用の可能性があるという研究があります。
研究要旨の引用:
『音楽刺激は,視覚刺激と比較し,より効率的に注意機能を促進するとされているが,その効果は十分明らかになっていない.
そこで健常者を対象に,近赤外線分光法を用い音楽活動時の前頭葉の賦活状況を分析し,注意障害の訓練における音楽の効果を検証した.
活動は,「注意課題」と「二重課題」を想定した活動を用いた.
その結果,「注意課題」では有意な傾向はみられなかったが,「二重課題」で実行機能に関与するとされている左側前頭葉背外側の賦活が有意に確認できた(p<0.05).
単独で用いるには課題の提示方法などに工夫が必要であるが,前頭葉背外側を用いるとされる注意機能の訓練に,音楽利用の可能性が示唆された.』
(音楽刺激と前頭葉機能の関連性について 作業療法(2011年10月15日) 30巻5号)
単純なことではないでしょうが、音楽を聴くことで注意機能が改善されたら素晴らしいことです。
また、囲碁が前頭前野を活性化させるという報告もあります。
東京都立神経病院の医師で囲碁高段者の飯塚あい先生の記事より引用します。
『東北大学の川島隆太教授の研究では、囲碁を知らない子どもに囲碁を教えることによって、数か月後には思考力、短期記憶力、総合的な作業力が向上し、脳の前頭前野(注意力、集中力などを司る部位)が活性化することが証明されました。
また、浜松医療センターの大内氏の研究によると、囲碁は前頭前野だけでなく、頭頂葉(空聞を把握する能力などを司る部位)を、東京女子医科大学の林道義教授によれば、左脳よりも右脳でより活性化をもたらすことがわかっています。
さらに、浜松医療センターの金子満雄氏の研究では、碁を打つ高齢者と打たない高齢者を比較すると、圧倒的に碁を打つ高齢者の方が認知症になる確率が低いという結果が出ているのです。』
囲碁を打ちながら楽しく前頭前野の活性化ができたら嬉しいですね。