なぜ認知症について知る必要があるのか
認知症の方は2010年の統計で全国に280万人いますが、2025年には730万人に達するとの推計が出ています。
これは高齢者の5人に1人の割合です。
認知症に対する理解は、超高齢社会の日本では重要です。
認知症とは
脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったために色々な障害が起こり、生活する上で支障が出ている状況がおよそ6ヶ月以上継続している状態を指します。
認知症の種類
認知症には変性疾患と、脳血管性とがあります。
変性疾患には、アルツハイマー型とレビー小体病、前頭・側頭型があります。
脳血管性には、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などがあります。
それぞれの割合は、アルツハイマー型が5〜6割ほど、レビー小体病、前頭・側頭型が1割ほど、脳血管性が2割ほどです。
認知症の方の約半数が変性疾患のアルツハイマー型ということになります。
変性疾患は認知機能が徐々に悪くなる特徴があり、脳血管性の場合は階段状に悪くなる特徴があります。
アルツハイマー型
アルツハイマー病によって起きます。
全般的に症状がありますが、記憶障害が強いです。
新しいことが覚えにくく、判断力や思考力も徐々に低下していきます。
知的能力だけでなく感情面や意思の面にも変化があります。
末期近くまで歩行が可能です。
性別的には女性に多い病気です。
発症を予防することは困難ですが、早期に治療を行えば進行を遅らせることができます。
アルツハイマー病は脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積することが原因で発症すると考えられています。
脳血管性の認知症
脳の血管が詰まったり破れたりして脳の一部の細胞が死ぬことで起きます。
日内変動や、日によっての症状の変動が大きいです。
できることとできないこととの差が大きいです。
記憶力や判断力が低下します。
思考力障害が現れます。
初期から手足の動きが悪くなることが多いです。
感情面ではその人らしさが保たれます。
性別的には男性に多い病気です。
進行性の病気ではないため、治療により回復が可能です。
認知症の症状
中核症状
必ず見られる症状があります。
記憶障害、見当識障害、理解力・判断力の障害、実行機能障害、それに感情表現の変化です。
記憶障害
正常な老化では覚えるのに時間がかかるのに対して、認知症では昔のことは覚えていても新しいことを覚えられなくなります。
進行すると覚えていたことを忘れます。
見当識障害
時間や季節の感覚がなくなったり、迷子になったり場所がわからなくなったり、家族を見てもわからなくなったりします。
理解力・判断力の障害
考えるのに時間がかかるようになる、2つ以上のことをうまく処理できなくなる、いつもと違う状況や出来事で混乱しやすくなる、現実的なことや具体的なことと観念的なこととが結びつかなくなる等の症状です。
物が何かわからなくなる失認、物や人の名前が出てこない失語、服の着方や道具の使い方がわからない失行が起きます。
実行機能障害
段取りや計画が立てられなくなったりします。
感情表現の変化
例えば、その場の状況が読めなかったり、急に怒り出したりします。
周辺症状
必ずではありませんが、しばしば見られる症状があります。
不眠・妄想
財布やものが盗まれたと言ったりする症状です。
抑鬱状態
気分が沈んでしまう症状です。
暴力・暴言
納得がいかない等で大声をあげたり暴力を振るったりする症状です。
徘徊
何かを探したり等で歩き回る症状です。
介護の拒否
入浴や着替えなどの介護を嫌がる症状です。
不穏
イライラして落ち着かなくなったり、一人で落ち着いていられなくなる症状です。
異食
食べられないものでも口にする症状です。
幻覚
現実にはないものを見た・聞いたと言う症状です。
正常な老化による物忘れと認知症による記憶障害の違い
老化による物忘れでは体験の一部を忘れるのに対して、認知症による記憶障害では体験の全てを忘れます。
老化による物忘れでは物忘れの自覚があるのに対して、認知症による記憶障害では物忘れの自覚がありません。
老化による物忘れでは親しい人やよく行く場所は忘れないのに対して、認知症による記憶障害では親しい人やよく行く場所がわからなくなります。
老化による物忘れでは性格は変わらないのに対して、認知症による記憶障害では性格に変化があります。
老化による物忘れでは自分の今いる場所や時間がわかるのに対して、認知症による記憶障害では自分の今いる場所や時間がわからなくなります。
自覚、感情
認知症患者本人は、記憶障害による失敗や、できていたことができなくなってきたことなどで、症状を自覚します。
その悲しみや不安などが更に認知症の症状として現れることがあります。
また認知症の方も感情はあるということを理解することが大事です。
参考文献:認知症サポーター養成講座資料
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