残業は仕事にも悪影響 なくすには職場の改善が必要 前編


長時間残業による過労死・うつ病発症などの問題は昨今に始まったわけではありませんが、なかなか解決しないですね。

過労死・うつ病まではいかなくても残業が私生活や仕事にどんな影響を及ぼすのか、なぜ残業になるのか、残業をなくすにはどうしたらいいのか、データをもとに一考したいと思います。

日本能率協会の「第7回「ビジネスパーソン1000人調査」【仕事と健康編】」(2016年7月26日〜8月1日)(調査の概要)(調査結果)で、「健康で働くために効果があると思うこと」「残業による私生活への影響」「残業をする理由」「残業を減らすために職場に求めること」「残業を減らすために自身で工夫していること」についての調査が行われました。

このデータを用いて独自の分析・まとめを行いました。

概要

残業による私生活への影響は、健康で働くために効果があると思うことをできなくする。残業を減らすために自身で工夫しても、残業をする理由の多くは職場の問題であり、だから残業を減らすために職場に求めることがある

考察

残業による私生活への影響

残業による私生活への影響は、特にないという意見(全体で35%)があります。内訳をみると、日に1時間未満の残業時間の人の46%は、特に影響はないという意見です。しかし日に3時間以上の人では特に影響はないという意見は25%であり、長時間残業では影響が顕著に出てくると考えられます。

心身の不調を感じたという内容のものも全体で19〜21%(身体面で不調を感じた(21%)、精神面で不調を感じた(19%))あります。日に3時間以上残業をしている人の場合、身体面で不調を感じた(21%)、精神面で不調を感じた(25%)です。長時間残業では精神面の不調が顕著なのかもしれません。

また、私生活上の時間が不足することによる問題があります。

例えば、睡眠不足になった(全体で25%)、食生活が乱れた(全体で22%)、運動不足になった(全体で15%)という、健康に大きく影響し得る生活習慣上の悪影響、趣味の時間が減った(全体で28%)という精神的な悪影響、家事・育児が十分にできなかった(全体で11%)とか家族・友人との会話が減った(全体で11%)という家庭への悪影響や交友関係上の悪影響があります。また自身のスキルアップのための勉強時間が減った(全体で9%)ことでスキルアップに悪影響があります。

時間が不足することによる問題は全体で合計121ポイントです。日に3時間以上残業をする人では合計172ポイントです。

日に3時間以上残業をする人が特に全体と差がある項目は睡眠不足になった(42%)、趣味の時間が減った(42%)、運動不足になった(23%)、食生活が乱れた(29%)、自身のスキルアップのための勉強時間が減った(15%)です。

残業は、健康問題を含む、時間が不足することによる問題を引き起こすといえます。そして特に長時間残業では顕著です。

心身の不調を感じた原因は、睡眠不足や食生活の乱れ運動不足の他、趣味の時間や家族や友人との会話が減ったことによる精神的悪影響、思うように家事・育児やスキルアップの時間が取れないことによるストレスも考えられます。

もう一つは、残業そのものがもたらすストレスも考えられます。例えば「仕事に追われている」という事実自体もストレスになるでしょう。また、残業に至った経緯がストレスになっている場合もあるでしょう。

ストレスによる精神の不調発症に、ストレス脆弱性モデルという考え方がありますが、身体についても適用できるのではないでしょうか。【ストレス脆弱性モデル(人によって耐えられるストレスの度合いが異なり、そのしきい値を超えたストレスが加わると発症するという理論)】

健康で働くために効果があると思うことができない

対人関係は大丈夫でしょうか。

健康で働くために効果があると思うことで、職場の人間関係を良好に保つという意見が全体で39%ありますが、日に3時間以上残業をしている人では25%です。

身構え・心構えの効果はあるでしょうか。

健康で働くために効果があると思うことで、定期的に健康診断を受ける(全体で29%)、健康に関する知識を身につける(全体で14%)、飲酒・喫煙を控える(全体で12%)という身構え・心構えをしても、残業による心身の不調は、そのまま仕事へ悪影響があります。

身構え心構えについては全体で合計55ポイントに対して、日に3時間以上の残業をしている人は合計53ポイントです。日に3時間以上の残業をしている人が特に全体と差がある項目は、定期的に健康診断を受ける(19%)です。

時間がないと問題が起きることもあります。

時間不足によって食生活の乱れや趣味の時間が減ったこと、運動不足になったことも、健康で働くために効果があると思うこと(健康的な食事を選ぶ(全体で30%)、趣味を充実させる(全体で30%)、日常生活の中で身体を動かすよう心がける(全体で22%)、定期的にスポーツをする(全体で16%))を侵害していますから、仕事への悪影響となり得るでしょう。

時間がないと多少の不調でも我慢して働くことで、不調の時は早めに受診する(全体で23%)ことができない場合があるとも考えられますし、ストレスチェックを受ける(全体で14%)こともし難いと考えられますが、これも後々悪影響となり得ます。

時間がないと問題が起きることについて、全体で合計135ポイントに対して、日に3時間以上残業をしている人は合計113ポイントです。日に3時間以上残業をしている人が特に全体と差がある項目は、ストレスチェックを受ける(8%)、日常生活の中で身体を動かすよう心がける(17%)です。

また計画的に有給休暇を消化できる(全体で27%)、残業を減らす(全体で20%)、ことが満足にできない等、私生活上の時間を作ることができないこと自体も、仕事への悪影響となり得ます。

時間を作ることについて、全体で合計47ポイントに対して、日に3時間以上残業をしている人は合計52ポイントです。日に3時間以上残業をしている人が特に全体と差がある項目は、残業を減らすで31%です。

長時間残業をしている人は、「対人関係」や「時間がないと問題が起きること」よりも、残業を減らして時間を作ることが最も効果があると思っています。それほど残業を減らしたいという思いが切実なのだと考えられます。一方で、残業を減らすことができないことでジレンマがあると思われます。

残業を減らすために自身で工夫

仕事を効率的にしやすくする工夫をしている人が少なくありません。書類や道具の整理整頓をする(全体で11%)、目の前の仕事に集中する(全体で23%)、仕事の進捗度合いを見える化する(全体で11%)、時間管理を徹底する(全体で19%)、優先順位の高いものから取り組む(全体で28%)工夫がされています。

また、必要以上の完璧さを求めない(全体で17%)ことも、仕事にかかる時間を短縮する工夫といえます。

新たな業務スキルを身につける(全体で7%)ことで仕事の効率を上げる努力をしている人もいます。

仕事の後にやりたいことを見つける(全体で5%)という意見もありますが、この結果モチベーションが高まって仕事を早く終えようとするでしょう。

仕事を効率的にしやすくする工夫をしている人は全体で合計121ポイントに対して、日に3時間以上の残業をしている人は合計92ポイントです。日に3時間以上の残業をしている人が特に全体と差がある項目は、優先順位の高いものから取り組む(13%)、時間管理を徹底する(10%)、仕事の進捗度合いを見える化する(4%)、書類や道具の整理整頓をする(17%)です。

残業による私生活への影響調査で、スキルアップのための勉強時間が減ったという意見があるわけですので、長時間残業の人ほど忙しいために、仕事を効率的にしやすくしたりする工夫がし難いのかもしれません。

周囲との調整・協調をしているという趣旨の意見もあります。

任せられる仕事は他人に任せる(全体で19%)、周囲と仕事に関する情報を共有する(全体で12%)という意見です。

周囲との人間関係を良くする(全体で11%)工夫も、それらのために役立つでしょう。

周囲との調整・協調をしているという意見は全体で合計42ポイントに対して、日に3時間以上の残業をしている人は合計46ポイントです。日に3時間以上の残業をしている人が特に全体と差がある項目は、周囲との人間関係を良くする(17%)です。長時間残業の環境では人間関係が難しくなりがちなのかもしれません。

しかし、工夫していることはない、という意見も32%あります。特に日に3時間以上残業している人の42%は工夫していることはない、という意見です。自身では残業を減らすための工夫しようがないのか、忙し過ぎて工夫しようがないのか、工夫していないから残業時間が長いのか、この調査ではわかりません。

しかし長時間残業の人ほどスキルアップしたりする工夫がしづらいと思われることから、その他の工夫をする時間も取りづらいと考えられます。

また、次に述べる残業をする理由を考えてみると、残業時間短縮のためには、自身の工夫をしても超えられない壁があるために、工夫をしないのではないかと思われます。

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