目次
健康診断の結果、そのままにしていませんか?
「コレステロールが高めですね」「血圧に注意してください」――健康診断でそう言われたものの、とくに症状もないし、まあ大丈夫だろう……。そんなふうに結果をしまい込んでいませんか?
実は、心筋梗塞は「ある日突然」起こる病気です。自覚症状がないまま動脈硬化が進み、ある朝いきなり胸が苦しくなる。そうなる前に自分のリスクがどれくらいあるのかを知っておくことが、何よりの予防になります。
そこで役立つのが、今回ご紹介する「吹田スコア」です。日本人のデータから作られたリスク予測ツールで、健康診断の結果があれば、ご自身の「今後10年間で心筋梗塞になる確率」をおおまかに知ることができます。
当サイトでは2017年に「吹田スコアで冠動脈疾患の発症率を確認できる計算フォーム」を公開し、多くの方にご利用いただいてきました。本記事はその内容を大幅にアップデートし、2022年のガイドライン改訂を踏まえた最新情報をお届けするものです。
今すぐスコアを計算したい方は → 吹田スコア計算フォームをご利用ください。
吹田スコアとは?日本人のための心筋梗塞リスク予測ツール
日本人のデータだから信頼できる
吹田スコアは、大阪府吹田市の住民を対象とした大規模な健康調査「吹田研究(Suita Study)」から生まれました。この研究は、国立循環器病研究センターが1989年から続けているもので、都市部に住む日本人の心臓病や脳卒中のリスクを長期間にわたって追跡しています。
2014年に正式に発表された吹田スコアは、約5,900人(5,866人)を平均11.8年間追跡したデータをもとに作られています。
欧米のスコアでは日本人に合わなかった
それまで日本でも使われていた「フラミンガムリスクスコア」は、アメリカ人のデータに基づくものでした。しかし、食生活や体質が異なる日本人にそのまま当てはめると、リスクを実際より高く見積もってしまう(最大で約14%の過大評価)という問題がありました。
吹田スコアは日本人のデータから作られているため、より正確にリスクを予測できます。2017年には、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」で主要なリスク評価ツールとして正式に採用されました。
【実践】吹田スコアを計算してみよう
吹田スコアは、以下の項目ごとに点数をつけて、合計点でリスクを判定します。健康診断の結果表をお手元に用意してください。
ここでは、2017年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに採用された版の点数表をご紹介します。
手軽に計算したい方へ:当サイトの吹田スコア計算フォームなら、項目を選ぶだけで自動計算できます。まずは下の点数表で仕組みを理解してから、フォームで試してみるのがおすすめです。
点数表
1. 年齢
| 年齢 | 点数 |
|---|---|
| 35〜44歳 | 30点 |
| 45〜54歳 | 38点 |
| 55〜64歳 | 45点 |
| 65〜69歳 | 51点 |
| 70歳以上 | 53点 |
2. 性別
| 性別 | 点数 |
|---|---|
| 男性 | 0点 |
| 女性 | -7点 |
女性ホルモンには血管を守る働きがあるため、女性はマイナス(リスクが低い方向)になります。
3. 喫煙
| 喫煙状況 | 点数 |
|---|---|
| 吸わない | 0点 |
| 現在吸っている | +5点 |
4. 血圧
血圧はJSH2014(日本高血圧学会2014年)の分類に基づき、5つの区分で評価されます。
| 分類 | 目安(上/下) | 点数 |
|---|---|---|
| 至適血圧 | 120未満 かつ 80未満 | -7点 |
| 正常血圧 | 120〜129 または 80〜84 | 0点 |
| 正常高値血圧 | 130〜139 または 85〜89 | 0点 |
| I度高血圧 | 140〜159 または 90〜99 | +4点 |
| II度以上高血圧 | 160以上 または 100以上 | +6点 |
正常血圧と正常高値血圧はどちらも0点ですが、正常高値の方は生活習慣の見直しが推奨される段階です。
5. HDLコレステロール(善玉コレステロール)
| HDL値(mg/dL) | 点数 |
|---|---|
| 40未満 | 0点 |
| 40〜59 | -5点 |
| 60以上 | -6点 |
善玉コレステロールは多いほどリスクが下がるため、マイナスの点数になります。HDLが40未満の場合は「善玉が少なすぎる」状態ですが、基準点(0点)として扱われます。
6. LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
| LDL値(mg/dL) | 点数 |
|---|---|
| 100未満 | 0点 |
| 100〜139 | +5点 |
| 140〜159 | +7点 |
| 160〜179 | +10点 |
| 180以上 | +11点 |
7. 耐糖能異常(糖尿病を含む)
| 状態 | 点数 |
|---|---|
| なし | 0点 |
| あり | +5点 |
※ 糖尿病と診断されていなくても、健康診断で「血糖値が高め」「耐糖能異常」「境界型」などと指摘されている場合は「あり」に該当します。
8. 早発性冠動脈疾患の家族歴
| 状態 | 点数 |
|---|---|
| なし | 0点 |
| あり(男性55歳未満・女性65歳未満で心筋梗塞を発症した血縁者がいる) | +5点 |
ご両親や兄弟姉妹に、比較的若い年齢で心筋梗塞になった方がいる場合、リスクが上がります。
腎機能(eGFR)について:2014年の原著論文版の吹田スコアでは、腎機能(CKD:慢性腎臓病)も評価項目に含まれていました(ステージ3で+3点、ステージ4以上で+14点)。腎臓病を指摘されている方は、上記の合計点よりもリスクが高くなる可能性がありますので、必ず医師にご相談ください。
合計点からリスクを判定
| 合計点 | 10年間の発症確率 | リスク分類 |
|---|---|---|
| 40点以下 | 2%未満 | 低リスク |
| 41〜55点 | 2%〜9%未満 | 中リスク |
| 56点以上 | 9%以上 | 高リスク |
計算してみよう:Aさん(60歳男性)の場合
具体的な例で見てみましょう。
Aさんのプロフィール
- 60歳、男性
- タバコは吸わない
- 耐糖能異常なし
- 血圧 148/92mmHg(I度高血圧)
- LDLコレステロール 145mg/dL
- HDLコレステロール 39mg/dL
- 家族歴なし
計算
| 項目 | Aさんの状態 | 点数 |
|---|---|---|
| 年齢(55〜64歳) | 60歳 | 45点 |
| 性別 | 男性 | 0点 |
| 喫煙 | なし | 0点 |
| 血圧 | I度高血圧 | +4点 |
| HDL | 39mg/dL | 0点 |
| LDL | 145mg/dL | +7点 |
| 耐糖能異常 | なし | 0点 |
| 家族歴 | なし | 0点 |
| 合計 | 56点 |
Aさんの合計は56点で、高リスクに該当します。これは、「同じ条件の人が100人いたら、今後10年間で約9人以上が心筋梗塞を発症する」という意味です。
ただし注目してほしいのは、Aさんは喫煙なし・糖尿病なしでも高リスクだということ。血圧とコレステロールの「ちょっとした異常」が積み重なるだけで、リスクは意外と高くなるのです。
ご自身のスコアを計算してみませんか? → 吹田スコア計算フォームで、健診結果を入力するだけで自動計算できます。
アプリやWebで簡単計算!リスクチェックの方法
「点数表を見ながら自分で計算するのは面倒……」という方には、2つの便利な方法があります。
方法1:当サイトの計算フォーム(吹田スコア)
当サイトでは、吹田スコアの計算フォームを公開しています。ブラウザ上で項目を選ぶだけで、すぐにスコアが計算されます。アプリのインストールは不要です。
方法2:「これりすくん」アプリ(久山町スコア)
より最新のリスク評価を試したい方には、日本動脈硬化学会が提供する無料アプリ「これりすくん」がおすすめです。
- 無料で利用可能(iOS/Android対応)
- 健診結果の数値を入力するだけのかんたん操作
- 2022年7月にアップデートされ、現在は最新の久山町スコアに対応
- 心筋梗塞だけでなく、脳梗塞のリスクも合わせて計算可能
App StoreまたはGoogle Playで「これりすくん」と検索してダウンロードしてみてください。
どちらを使えばいい? 吹田スコアで「自分のリスク因子がどう点数に影響しているか」を理解してから、これりすくんで最新の総合リスクを確認する――という使い方がおすすめです。
スコアの結果をどう読む?低・中・高リスクの意味と対応
低リスク(40点以下 / 10年間発症率 2%未満)
今のところ心筋梗塞のリスクは低い状態です。ただし「リスクがゼロ」というわけではありません。現在の良い生活習慣を維持しつつ、年1回の健康診断は欠かさず受けましょう。
中リスク(41〜55点 / 10年間発症率 2%〜9%未満)
注意が必要な段階です。生活習慣の見直しを始めるタイミングです。食事や運動を改善するだけでも、リスクを下げられる可能性があります。健診結果をかかりつけ医に見せて相談するのもよいでしょう。
高リスク(56点以上 / 10年間発症率 9%以上)
できるだけ早く医療機関を受診してください。生活習慣の改善に加え、コレステロールや血圧を下げる薬による治療が必要になる場合があります。「まだ症状がないから」と放置するのが最も危険です。
吹田スコアの現在地:2022年版ガイドラインでの変更点
久山町スコアへの移行
2022年に改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、リスク評価の主要ツールが吹田スコアから「久山町スコア」に変更されました。
久山町スコアは、福岡県久山町の住民を対象とした研究(久山町研究)から生まれたもので、吹田スコアとの大きな違いは以下のとおりです。
| 吹田スコア | 久山町スコア | |
|---|---|---|
| 予測できる病気 | 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症) | 冠動脈疾患 + アテローム血栓性脳梗塞 |
| 対象年齢 | 35歳以上 | 40〜79歳 |
| ガイドライン | 2017年版で採用 | 2022年版で採用 |
脳梗塞も合わせて予測できるという点で、久山町スコアのほうがより包括的な評価が可能です。
吹田スコアはもう使えないの?
「久山町スコアに変わったなら、吹田スコアは意味がないの?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
吹田スコアで使われている項目(年齢、性別、血圧、コレステロール、喫煙、耐糖能異常など)は、久山町スコアでも同様に重要視されています。吹田スコアの考え方を理解しておくことは、ご自身のリスク因子を把握するうえで十分に役立ちます。
当サイトの計算フォームで各項目がスコアにどう影響するかを体験的に理解したうえで、「これりすくん」アプリで最新の久山町スコアも確認する――この組み合わせが、ご自身のリスクを多角的に把握するベストな方法です。
心筋梗塞リスクを下げる3つの生活習慣
スコアの結果がどうであれ、生活習慣を改善することでリスクは下げられます。ガイドラインで推奨されている3つのポイントをご紹介します。
1. 食事:「日本食パターン」と減塩を意識する
特別なダイエットは必要ありません。昔ながらの日本食を意識するだけで、動脈硬化の予防につながります。
積極的に摂りたいもの
- 魚(特に青魚:サバ、イワシ、サンマなど)
- 大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)
- 野菜・海藻類・食物繊維が豊富な食材
控えめにしたいもの
- 肉の脂身、加工肉(ベーコン、ソーセージなど)
- 塩分(1日6g未満が目標)
「1日6g未満」はかなり少なく感じるかもしれません。まずは「味噌汁を1日1杯にする」「漬物を減らす」「麺類の汁を残す」など、できることから始めてみましょう。減塩の具体的な方法については「生活習慣病にならないために 減塩の勧め」もあわせてご覧ください。
また、食物繊維の摂取はコレステロール値の改善や血糖値の安定にも効果が期待できます。食べる順番を工夫するだけでも食後血糖値の上昇を抑えられます。
2. 運動:まずは1日30分のウォーキングから
ガイドラインでは、中くらいの強さの有酸素運動を1日30分以上、できれば毎日行うことが推奨されています。最低でも週3回は確保したいところです。1日にどれくらいの運動が必要かについては、「1日に必要な運動はどれくらい」で詳しく解説しています。
「中くらいの強さ」とは、少し息が弾むけれど会話はできる程度のこと。速歩きのウォーキングがまさにぴったりです。
- 通勤時にひと駅分歩く
- エレベーターの代わりに階段を使う
- 昼休みに10分間散歩する
こうした日常のちょっとした工夫の積み重ねが、心臓を守ることにつながります。
3. 禁煙:最も効果的な予防法
喫煙は動脈硬化を進める最大のリスク因子のひとつです。禁煙の効果は科学的にはっきりと証明されています。
- 禁煙後1年で、心筋梗塞のリスクが喫煙者のおよそ半分に低下
- 15年で、非喫煙者とほぼ同じレベルまで回復
これはWHO(世界保健機関)や米国公衆衛生総監報告でも一貫して示されている数字です。「今さらやめても遅い」ということはありません。何歳であっても、禁煙した瞬間からリスクは下がり始めます。最近は禁煙外来で保険適用の治療も受けられますので、自力で難しい場合はぜひ医療機関に相談してみてください。
まとめ:健診結果を「行動」に変えよう
- 吹田スコアは、日本人のデータに基づいた心筋梗塞のリスク予測ツールです
- 健康診断の結果から、10年間の発症確率をおおまかに知ることができます
- 2022年のガイドライン改訂で久山町スコアに移行しましたが、リスク因子の考え方は共通しています
- 当サイトの計算フォームや無料アプリ「これりすくん」で手軽にリスクチェックができます
- 食事・運動・禁煙の3つを見直すことで、リスクは確実に下げられます
受診の目安
- 高リスク(56点以上)の方:できるだけ早く内科・循環器内科を受診してください
- 中リスク(41〜55点)の方:次の健康診断を待たず、かかりつけ医に相談しましょう
- 低リスク(40点以下)の方:今の生活習慣を維持しつつ、年1回の健診を継続してください
大切なのは、健診結果を「見て終わり」にしないこと。まずは計算フォームでご自身のスコアを確認するところから、一歩踏み出してみてください。
関連記事
- 吹田スコアで冠動脈疾患の発症率を確認できる計算フォーム
- 動脈硬化に気をつける生活習慣を身につけて血管ケアを
- 生活習慣病にならないために 減塩の勧め
- 生活習慣病にならないために 食物繊維の勧め
- 食物繊維の多い食材一覧
- 1日に必要な運動はどれくらい
- 食べ方を工夫して食後高血糖や肥満対策
※ この記事は一般的な健康情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の疾患の診断や治療を目的としたものではありません。ご自身の健康状態について気になることがある場合は、必ず医師にご相談ください。
記事内の点数表および当サイトの計算フォームは、2017年版「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に採用された吹田スコアに基づいています。2014年の原著論文版ではeGFR(腎機能)が評価項目に含まれ、耐糖能異常の代わりに糖尿病(+6点)が使用されていました。最新のガイドラインに基づくリスク評価には「これりすくん」アプリ(久山町スコア対応)をご利用ください。
最終更新:2025年3月

コメント